シチリア島ではパレルモに次ぐ人口を誇るカターニア。南イタリアのミラノと呼ばれ、シチリア最大の経済都市です。なんと地下鉄まであります。
カターニアはエトナ山の麓に位置し、これまで噴火や地震による災害を受けてきました。1693年のエトナ山噴火、およびそれに伴う地震によって、街は壊滅状態になりました。その後、1700年代初頭に街は再建され、バロック様式の建築が並ぶ美しい都市が現在まで引き継がれています。
カターニアの建築に多く見られる黒い建材は、エトナ山の溶岩を利用したものだそうです。
この記事の写真はSONY α7 IV(ILCE-7M4)とSONY FE 24-105mm F4 G OSS(SEL24105G)の組み合わせで撮影しています。
カターニアの朝市
朝早くにシラクーサを出発したのは、カターニアの朝市を見るためです。シチリアは山の幸と海の幸に恵まれ、レモン、オリーブ、オレンジ、アーモンド、チーズ、ワインなど多くの名産品があります。
シチリアと本土を隔てるメッシーナ海峡には、「フェルーカ」と呼ばれる伝統的な漁があります。カジキやマグロを銛で突いて獲得する、いわゆる「突きん棒」です。昔、「凄ワザキング」というテレビ番組で特集されましたね。ここカターニアの市場にもカジキやマグロが並んでいました。
漁師、あるいは魚屋さんの次なる当主になるであろう男性。彼の父親らしい方に優しく見守られながら仕事をしていました。私が日本人だと判明するやいなや、その父親らしい男性が「彼を撮ってくれ!」と。照れながらも、彼は写真を撮らせてくれました。
このカターニアの市場はエネルギーが溢れており、タイの線路市場を思い出します。何なら匂いも似ています。おそらく、屋外の生鮮市場の匂いはどこの国も大体一緒なのでしょう。野菜、果物、魚介、コンクリート、排気ガスが混ざりあった匂いです。
オリーブ売りの主人。何個か試食させてくれましたが(させられた?)、オリーブ直食いは私には厳しかった…
この平たい桃の名前はペスカ・タバッキエラ(嗅ぎタバコケースの桃、Pesca tabacchiera)。この平たい桃は、シチリア最高峰のエトナ火山の麓で生産されています。お値段は1個50セントでした(まとめ買いすればもっと安いです)。
上の写真の果物屋の店主は一見職人気質ですが、とっても優しかったです。
果肉は白く少し硬めの食感であり、甘みが強いです。しかしながら、山梨や福島の桃を食べ慣れた方でしたら甘みは普通と感じるかもしれません(日本の桃はレベルが高すぎる)。シチリアというロケーション、市場の活気、そしてうだる暑さが最高の調味料となり、私にとっては忘れられない味になりました。
塩とレモンの炭酸ジュース「リモナータ・コン・サーレ」
シチリアの夏の飲み物といえば塩入りレモンジュースです。暑い日のミネラル補給として愛されている飲み物です。写真に映る3名の男性のうち、一番右の男性がレモンジュース屋さんの店主です。左の2名は常連さんでしょうか。南イタリアの愛すべき陽気なおじさんたちです。
塩をひとつまみ加えた炭酸水に、レモンを丸ごと2つ絞った果汁を加えて…
混ぜると出来上がり!炭酸が強くて溢れていますね。一口目は不思議な味だと思いましたが、二口目からはとても爽快な飲み物だと感じました。夏の暑い日に飲むのが最高ですね。なお、お値段は1杯1ユーロでした(¥140くらい)。
シチリア名物「グラニータ」
グラニータ(Granita)はシチリア発祥の氷菓のことで、フルーツ・コーヒー・ナッツ類などで味付けされたシロップを凍らせて砕いたものです。日本での知名度は高くありませんが、イタリアでは全国で楽しまれています。このグラニータのテクスチャは地域によって異なり、ジェラートのような滑らかなものから、かき氷に近いシャリシャリしたものまでバラエティに富んでいます。
さて、私はピスタチオ味のグラニータを頂きました。お店は”Bar Papa”。すごく評判が良かったので訪れてみたら、期待以上でした。今回の旅行で最も美味しかったもののひとつがこちらのグラニータです。こんな美味いもの初めて食べました。ちなみに、シチリアのピスタチオは「緑の宝石」と言われ、鮮やかなグリーンとローストしたときの風味の良さ、そして油分の多さに由来する甘みが特徴です。このグラニータは、シチリアのピスタチオの素晴らしさを存分に体験させてくれました。
シチリアではブリオッシュ(クロワッサン的なパン)にグラニータを挟んだり、浸したりしながら食べることが多いそうです。自分もそれにならって、プレーンのブリオッシュを一緒に注文しました。ブリオッシュの生地がグラニータを吸収してくれて、非常に美味しかったです。
イタリアでは朝食時にエスプレッソ(カプチーノ)とパンを食べますが、暑い夏にはエスプレッソの代わりに冷たいグラニータが好まれています。特に、エスプレッソがベースの「グラニータ・ディ・カフェ」はとても人気があるそうです。
お世話になったBar Papaさん。地元の人々にとても愛されていることが伝わってきました。
カターニア旧市街を歩く
ここカターニア旧市街は世界遺産ヴァル・ディ・ノートのひとつです。これまで訪れたラグーザ、モディカ、そしてノートよりも人口が遥かに多いため、少し混沌とした雰囲気があります。しかし、建築の素晴らしさは流石世界遺産です。
ドゥオーモ広場はカターニアの中心地であり、この広場から北に伸びるエトネーア通りがカターニアの目抜き通りです。ドゥオーモの名前はサンタ・アガタ大聖堂(Cattedrale di S.Agata)。11世紀中期に竣工し、1693年の大震災の後にバロック様式で再建されました。
正面のゲートはウツェダ門(Porta Uzeda)。旧市街と港湾地区をつなぐ重要な役割を果たします。
広場からエトナ火山の方に向かうと、目抜き通りの「エトネーア通り」です。道幅が広く、カターニアの栄華を感じます。エスニックな雰囲気の市場からしっかりと欧州を感じられる旧市街まで、バラエティに富んだ魅力があるのがカターニアです。
魚介のリゾット
お夕飯はエトネーア通りの付近にある”La Quartara”というトラットリアで、魚介のリゾットを頂きました。流石はシチリア、魚介が最高に美味しいですね。ムール貝、イカ、エビなど、様々な具材がたっぷりでした。
付け合せのパンと店内の様子。素敵なトラットリアでした。
寝台列車でイタリア本土へ
この日の宿は寝台特急です。シチリア東岸からイタリア本土へは特急列車が定期運行されています。島なのに本土直通の特急列車があるのは違和感がありますよね。なんと、この特急列車は列車を船に積み込んで海を渡ります。寝台特急の詳しい様子は別の記事で紹介したいと思います。(安全のため?)ナポリを通過する列車を選択し、かつ一等個室寝台を利用しました。
私はこの列車でローマまで向かい、高速列車のFrecciarossa(フレッチャロッサ)に乗り換えてフィレンツェへ向かいました。それではおやすみなさい。