肉の万世と交通博物館の思い出
万世橋に大きなビル、通称「肉ビル」を構える肉の万世。皆さんはどんな思い出があるでしょうか。私の肉の万世の思い出は、交通博物館と共にあります。
2006年まで存在した万世橋の交通博物館。1998年生まれの私は、子どもの頃によく連れて行ってもらいました。地下の日比谷線秋葉原駅から地上に出て、万世橋を渡った先に交通博物館はありました。表玄関の蒸気機関車と0系新幹線、中に入れば素晴らしい展示の数々と、夢いっぱいの模型の運転体験が待っていました。
交通博物館に行った日の食事は、館内の食堂「レストランこだま」で済ませることがほとんどだったと思います。実際の食堂車にも入っていた日本レストランエンタープライズ(NRE)の運営でした。なお、カレーを食べた記憶しかありません。大学生協の食堂でもほとんどカレーを頼み、今でも社員食堂のカレーを週5で食べているので、当時からカレーが好きだったのでしょう。
しかし、「レストランこだま」ばかりでは親も飽きるのでしょうか。たまに肉の万世・秋葉原本店でご飯を食べさせてくれました。肉よりカレーが好きだったので、食事という側面では気乗りしませんでした。しかし、「レストランこだま」よりも好きなアングルから万世橋の風景を拝めたので、風景目当てに付き合っていた気がします。いま思うと贅沢な話です。
交通博物館が大宮に移転して以来、肉の万世・秋葉原本店には訪れていませんでした。今日までの私と肉の万世の関わりといえば、東海道新幹線に乗るときに買う「万かつサンド」くらいでした。
肉の万世・秋葉原本店に開店突撃
来る2024年3月31日、肉の万世・秋葉原本店が閉店するとのお知らせを拝見しました。秋葉原のランドマークのひとつとして君臨していた肉の万世ですから、閉店とあっては大変な混雑が予想されます。1時間待ちも覚悟の上で、ランチタイムに突撃してきました。
秋葉原駅を降りて、万世橋を渡った先に「肉ビル」はあります。オレンジ一色だった中央線快速の車両も、現代的なステンレスの車両に変わりました。ステンレスの車両は、ちょうど交通博物館が閉館した年に登場したそうです。
台湾の九份のような提灯が出迎えてくれます。1Fが排骨麺店、3F・4Fが洋食店です。今回はお肉が目当てなので、洋食店へ行きます。
中に入るとお神輿があり、奥には万かつサンドなどを扱うお土産屋さんがあります。私は食べたことがないですが、こちらの黒毛和牛佃煮セットは大変美味しいそうです。
お土産屋さんの奥には「ウルトラマンカツサンド」の自販機とディスプレイがありました。外の電光掲示板は「いらしゃいまんせい」でしたが、自販機のウルトラマンは「いらっしゃいまんせい」と言っていますね。「いらしゃい」という東京弁があるのかと勝手に思っていましたが、文字数の都合でしょうか。
エレベーターで4Fに上がると、レジの脇にはレトルトのビーフシチューやハンバーグ、ソーセージなどの冷蔵品が売られていました。個人的に「ワインらっきょう」が気になりました。
万世橋の風景を見ながら上質な肉をいただく
窓から万世橋の様子が見えるのは昔のままですね。座席は選べないようで、運が悪ければ全く窓の無い空間に案内されることもあります。開店は11:00ちょうどで、11:05頃に記帳しました。呼び出しされてもいらっしゃらないお客さんが結構多く、待っている人数の割に早く順番が回ってきました。20分ほどで座席にありつけたと思います。私は上の写真の右側の、窓がある席に案内していただけました。ラッキーです。
こちらがランチメニュー。16:00までランチ営業をしているそうです。私は「ハンバーグと国産牛カットステーキランチ」を注文しました。ハンバーグ180gでステーキはミディアムレア(おすすめらしい)、ステーキソースのプランにしました。税込み¥2,574。もっと高級なお店だと思っていましたが、ステーキとしては一般的な価格ではないでしょうか。
お食事を作っていただいている間に窓の外を見ていました。20年近く前と比べると高層建築が増え、風景は変化したと感じます。しかし、万世橋と総武線の高架という不変かつ圧倒的なものが存在し続けているおかけで充分ノスタルジーに浸ることができます。
中央本線・旧万世橋駅の風景はあまり変わっていませんね。神田川は江戸時代初期、徳川秀忠の命で開削されました。また、万世橋と旧万世橋駅は明治時代に、奥の総武線の高架は大正時代に、さらに奥の医科歯科大、順天堂大などは昭和から平成に建設されました。この一枚の写真だけでも、江戸、東京の街作りの歴史を感じ取ることができます。
お食事を持ってきていただきました。ハンバーグにはスライスチーズが、ステーキにはガーリックバターがトッピングされていました。付け合せはフレンチフライと茹でたブロッコリーです。焼けすぎ防止のためでしょうか、スライス玉ねぎが敷いてありました。
ハンバーグランチには珍しく、サイドメニューは豚汁です。豚汁があるおかげでしょうか、お箸が用意されていて嬉しい限りです。こちらの豚汁はすごく安心する味わいで、ガッツリとしたメインディッシュと相性が良かったです。
サイドメニューその2、おかわり自由のライスです。豚汁とは異なり、ハンバーグ屋さんでよくある洋風の平たいお皿に盛り付けられていました。ご飯の雰囲気も典型的なハンバーグ屋さんで、あまり熱くなくて硬めに炊いてあります。私はジャスミンライスのような乾いた硬いお米が好きなので、日本食のアツアツウェットなお米でなくて安心しました。
肝心のメインディッシュの感想ですが、肉は「肉の万世」と名乗るだけあって、非常に肉々しく、美味しかったです。私はステーキよりもハンバーグの方が肉汁たっぷりで好印象でした。付け合せのフレンチフライと茹でたブロッコリーは美味くも不味くもなかったです。下敷きの玉ねぎはとても美味しかったです。ハンバーグに付いている玉ねぎってどうしてこんなに美味しいんでしょうね。
今の大衆レストランにはなかなか見られない贅沢なスペースの取り方な気がします。少々混んできたので、食べ終わって早めに撤収しました。
3/31に閉店なので、もう二度とこの空間に入ることは無いでしょう。美しい万世橋を見ながら万世のお肉をいただくことはもうできないのが悲しいですね。他のお客さんからいろいろ話が聞こえてきましたが、幼い頃に肉の万世に連れて行ってもらった、あるいは連れて行った方が多い印象的でした。おそらく私と同様の理由で、交通博物館とセットで行っていたのでしょう。当時の秋葉原は今ほど発展しておらず、交通博物館くらいしかめぼしいスポットはなかったでしょうから。現在、立派なUDXが建っているところもバスケットボールのコートしかありませんでした(千代田遺産:秋葉原クロスフィールド)。
さて、さんざん思い出に浸りながら肉をいただきましたが、肉の万世はアキバプレイスに移転OPENするそうです。肉ビルでいただくことは叶いませんが、秋葉原に存在し続けてくれます。新しくできたら行ってみましょうか。